Archive for the ‘相続税’ Category

1.相続税とは

人が亡くなった際にかかる「相続税」。

一般の人々にとってはなじみの薄いものだったのですが、昨年の改正によって相続税を払わなくてはならない対象者が増え、注目を浴びています。

この相続税、制度はものすごく複雑なのですが、簡単にいうと以下の通りの手順で計算されます。

 

  • ①純財産…亡くなった時点の財産から負債を引いたもの。時価で計算します)
  • ②基礎控除…相続人一人当たり600万円に、3000万円を加えたもの)
  • ③(①-②)を法定相続分で相続したと仮定した場合の相続税額…①-②を法定相続分で割り、それぞれに相続税率を掛けます
  • ④相続税総額…③を合計します
  • ⑤それぞれの財産取得割合に応じて、④を再度配分します。

 

要するに、「全体を一旦法定相続分で分けたと仮定して総税額を計算し、財産取得割合に応じて分ける」という方法を採用している訳です。

 

この他、配偶者が財産を取得した場合の大きな特典や、その他控除、財産の時価を計算する場合の有利な制度等がありますが、今回は省略します。

 

2.財産に対してどれくらいの相続税がかかるか

相続税の「税率表」は、次の通りです。

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

 

この税率表、見ての通り財産が増えると率も上がる「累進性」を取っています。

しかし、たとえば「法定相続分に応ずる取得金額」(1.の③を計算する際に利用します)が1億円から1.5億円になった場合、急に30%から40%になるかというとそうではありません。

右の「控除額」という欄を見て下さい。

税金を計算する際は、金額×税率から「控除額」を差し引きすることで、財産と税金の関係が滑らかな曲線に近くなるよう設計されているのです。2億円までの財産に対する相続税は、次のグラフのようになります

相続財産と相続税の関係

相続財産(一人当)と税額との関係

 

では実際にどれくらいの相続税がかかるのでしょうか。

財産や相続人の数応じてたくさんのパターンがありますから、ここでは3つほどの事例を挙げておきます。

1.と同様、税制上の特典利用等は省略していますので、相続人も配偶者なしの場合だけです。

 

  • ①相続財産が5億円、相続人3人…1億2980万円(財産に対して約26%)
  • ②相続財産が10億円、相続人3人…3億5000万円(同 35%)
  • ③相続財産が1億円、相続人4人…490万円(同 約5%)

 

相続財産や相続人の数によって大きく変わることが分かって頂けたと思います。

相続財産、相続人と税金の関係については、当所のシミュレーションページにて色々と試してみて下さい。

 

3.「贈与税は高い」のホントと嘘

相続税は決して低い負担ではありませんから、生前に自分の財産を子供たちに移してしまい、相続税がかからないようにしたいと願うのは自然な流れかもしれません。

そうなると相続税が取れませんので、国は「贈与税」という制度を相続税法の中に置いて、そのような回避行為が出来ないようにしています。

贈与税の税率表は次の通りです。

計算方法は相続税と似ていて、贈与金額-基礎控除(110万円)に税率を掛け、控除額を差し引きます。

 

贈与税の税率表(一般)

基礎控除後の課税価格

税 率

控除額

200万円

以下

10%

300万円

以下

15%

10万円

400万円

以下

20%

25万円

600万円

以下

30%

65万円

1,000万円

以下

40%

125万円

1,500万円

以下

45%

175万円

3,000万円

以下

50%

250万円

相続税の表と比べて頂ければお分かりと思いますが、同じ税率に対して対象となる財産の金額が非常に低くなっています。ということは、より低い財産の時に高い税率が適用されるのです。

 

これが、贈与税が高いと言われるゆえんです。

このため、一般には「贈与は基礎控除(年110万円までなら税金がかかりません)までにすべき」という意見も良く聞かれます。

しかし、本当にそれだけが正しいでしょうか?

 

4.賢い贈与の利用

実際、贈与税の税負担はどれくらいでしょうか。

いろいろなパターンがありますが、例えば以下の通りになります。

 

  • (a)3人に110万円ずつ330万円贈与した場合…税額なし(財産に対して0%)
  • (b)3人に500万円ずつ1500万円贈与した場合…159万円(同 10.6%)
  • (c)1人に1500万円贈与した場合…450.5万円(同 約30%)
  • (d)1人に3000万円贈与した場合…1195万円(同 約40%)

 

これを1.の例と比較してみて下さい。

①の方は、何もしなければ相続財産に26%の相続税が掛ります。となると、(a)、(b)の贈与を相続人の予定者(推定相続人と言います)に対して先に行っておけば、対象となる財産に関してはより低い税金で財産が移転出来ることになるのです。

同じく②の方ですと、(a)、(b)、(c)の方法までが有利となりますが、(d)は不利となります。

このように、相続税がかかる金額とその財産に対する比率を予想し、有利な贈与を毎年行っていけば、相続税は効果的に減らすことが可能です。

 

5.税理士の活用

ただ、良い事ばかりでもありません。この手法を使う場合には、例えば以下のような点に注意する必要があります。

・  贈与税の申告が必要(贈与の翌年3月15日まで)

・  相続発生以前3年内の贈与は、相続財産に含められる(払った贈与税は相続税の前払としてもらえる)

・  財産の価値増減は読みにくく、有利と思っていたものが不利になる可能性もある

・  時価の計算は、財産の多い人は全てが預金でもない限りは非常に難しい(特にオーナー会社の株式や不動産の時価計算)

・  税額の計算シミュレーションは非常に専門的で、これもまた難しい

 

このため、この対策を採るに当たっては必ず相続税に強い税理士にアドバイスを依頼されることをお勧めします。

 

以上


いわゆる「相続税対策」や「事業承継対策」の仕事をしていますと、資産家や経営者の方々から「出来るだけ子供たちには公平に資産を分けたい」というご意向を伺う時が良くあります。

この「親が子を思う気持ち」、大変良くわかるのですが、悲しいことに相続において「絶対的公平」は不可能だと思って頂いた方が良いのです。

この記事に置いては、何故それが不可能かについて説明し、どのようにすれば「公平」が実現できるかについて述べてみたいと思います。

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1.財産分けの難しさ

相続において重要な「財産分け」。

この財産分けに置いては、よく「争族」と呼ばれるように揉めることが少なくありません。

なぜ単に「分ける」ことがそれほど難しいのでしょうか?

それは、相続をとりまくさまざまな法律や実務が極めて大きく影響しています。

 

今、100万円の預金があるとします。これをあなたとご友人の2人で「公平に」半分ずつ分けて下さい、と私が依頼した場合、あなたならどのように分けるでしょうか?

この場合は、当然ながら「50万円ずつ」が正解ですね。

しかし、同じ100万円であっても、一株の時価が現在100万円の株式ならどうでしょうか?

真っ二つに切り裂くわけにもいかないし、さりとて一人が一株を手に入れてしまえば、もう一人が受け取る分は無くなります。

このような場合、少し考えれば「株式を売却して現金化し、50万円ずつ分ける」ならば公平を保ったまま分けることが出来ると気づくかもしれません。

ではさらに、「その株式を現金化してはならない 」という条件が与えられた場合にはどうでしょうか。

幸運なことに、世の中にはこの問題に対する答えがきちんと用意されています。

株式をもらった側は、自らの手持資金から50万円を支出し、株式をもらっていない側に渡せばいいのです。

この場合、手持資金がなければ50万円を借りて支払ってもかまいません。なぜなら、手元には100万円相当の株式があり、50万円の借金が出来たとしても差引50万円の財産増加には変わりないからです。

ここでは、あなたが株式を受け取り、すぐに現金が必要であった友人はあなたから50万円の現金を受け取ったと仮定しましょう。

 

これで公平に分割が出来た、と思っていたあなたと友人は、後にそれが誤っていたことに気づきます。

というのも、この株式会社がその後すばらしい新技術を開発し、その技術を利用した製品の市場があまりに大きいため株価が一度に100倍になってしまったのです。

つまり、あなたの友人は50万円の現金しか手に出来なかったのに、あなたは一躍1億円(彼に先に50万円を支払っているから、正確には9,950万円)の価値ある資産を手に出来たことになります。

そうなれば、「損をした」友人はおそらく黙っていないでしょう。あなたの幸運をうらやみ、何がしかの補償を要求するかもしれません。分割時点では公平でも、結果として「公平」とはとてもいえない結果となったのですから当然とも言えます。

それに応じるかどうかはあなた次第ですが、いずれにせよあなたと友人の仲が悪化しないことを祈るばかりです。

さて一体、「公平な分割」とは何だったのでしょうか?

 

2.相続における財産分け(遺産分割)

このような問題は、当然ながら相続の現場において頻発します。

分割が「著しく不合理」であった場合には分割をやりなおすことも認められていますが、単に不動産の収益性の見込み誤り等による不合理については、そのような分割のやり直しを認められていません。

このような問題が起こる理由は、それほど複雑ではありません。

単に民法(相続法)、税法(相続税法)、経済実態(見込も含む)によって、全く「公平」の概念が異なるからなのです。

 

民法上の公平は、「相続が発生した時点の時価」によって評価した財産を公平に分割することにより実現できます。この民法の考え方が最も私たちの常識に近く、一般的であると言えます。

しかし経済実態上の公平は、その時点での時価評価だけを考えていては実現できません。

将来についても予測可能な範囲で考慮することが必要となります。
先の例で言えば、分割する時点で件の新技術の開発が実現していたならば、その果実を見込んで発生した株価上昇による利益の一部はあなたの友人にも当然与えられるべきであるとも言えます。

 

税法に基づいて公平を考えた場合には、民法の考え方とほとんどの場合同じ考え方となります。

なぜなら、相続税が課税される財産を計算する際は、原則として民法と同様に時価を採用するからです。

しかし、税法には他と大きな違いがあります。それは税法上の優遇措置などの政策的項目です。

一般的なものは下記の通りです。

 

・  小規模宅地等の評価減…居住用、事業用の宅地については大幅な減額が認められる

・  基礎控除、生命保険料控除…相続人数に応じて、非課税となる金額が増加

・  配偶者の税額控除…配偶者の相続分は、法定相続分か1億6000万円のいずれか多い方まで非課税

・  株式の評価手法…同族株主グループかどうかによって大きく時価が異なる

 

これらは、当然ながら時価で計算した結果との乖離を生み、当然ながら相続税額の計算にも影響を与えます。たとえば、配偶者の税額軽減など相続財産の配分方法によって税額そのものが変わってくるような制度の場合であると、民法上の公平を実現しても、税法上はもっとも税額を圧縮したとはいえなくなる場合が出てきます。

 

3.財産分け時の配慮

同じ「財産を分割する」ということであっても、法律等の考え方の違いで大きな差が発生することが分かって頂けたでしょうか。

当然ながら、民法、税法、経済実態のうちひとつの考え方だけを採用して分割を決定した場合、税金面で割高となったり、損をした(と感じる)他の相続人等から異論が出て来る可能性は高くなります。

財産分けを行う場合にはこれらのうちどの考え方を採用するかについて常に注意を払い、各相続人等に納得してもらう必要があります。

この納得してもらう方法にはいろいろありますが、やはり一番は被相続人となる予定の方(親など)が相続人となる予定の方(推定相続人)対してきちんと説明しておくことが大事です。またこれらを遺言によって説明しておくことも大変効果的です。

(参考:事務所ブログ 「遺言を書こう」

もちろん相続税を計算するわれわれとしても、分割の決定まではこれらを出来るだけ詳しく、わかりやすく説明することが不可欠であると考えています。

以上


1.はじめに

平成25年度税制改正により相続税法(及び租税特別措置法)の一部が改正されました。これらの改正のうち、平成27年1月1日以降の相続等から適用されるものについて解説します。

 

2.遺産に係る基礎控除

相続財産が「基礎控除額」を超える場合、原則として相続税の申告をする必要がありますが、その基礎控除額が、次のように4割減とされました。

<改正前>5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
<改正後>3,000万円+ 600万円×法定相続人の数

 

3.相続税の税率構造

相続税額は、①課税価格の合計額から上記の基礎控除額を控除した金額である課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定した場合の各取得金額に対して、②超過累進税率により税率を乗じて算出し、③各取得金額に対する②を合計して計算します。

今回の改正により、この税率構造の一部について次のように変更されました。

法定相続分に対する取得金額

改正前

改正後

税率

速算控除

税率

速算控除

1000万円以下

10%

0万円

10%

0万円

3000万円以下

15%

50万円

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

30%

700万円

2億円以下

40%

1700万円

40%

1700万円

3億円以下

45%

2700万円

6億円以下

50%

4700万円

50%

4200万円

6億円超

55%

7200万円

例:基礎控除後の相続財産が9億円で、相続人が子供ばかり3人の場合、相続税額は以下の通りとなります。

 ①課税遺産総額90000万円÷3=30000万円(一人当たり)
 ②一人当たり税額
 (改正前)30000万円×40%-1700万円=10300万円
改正後)30000万円×45%-2700万円=10800万円
 ③合計税額
 (改正前)10300×3=30900万円
 (改正後)10800×3=32400万円

(参考)贈与税改正

 

改正前

改正後

直系尊属→20歳以上

基礎控除後金額

税率

控除額

税率

控除額

税率

控除額

 200万円以下

10%

10%

10%

 300万円以下

15%

10万円

15%

10万円

15%

10万円

 400万円以下

20%

25万円

20%

25万円

 600万円以下

30%

65万円

30%

65万円

20%

30万円

 1000万円以下

40%

125万円

40%

125万円

30%

90万円

 1500万円以下

50%

225万円

45%

175万円

40%

190万円

 3000万円以下

50%

250万円

45%

265万円

 4500万円以下

55%

400万円

50%

415万円

 4500万円超

55%

640万円

例:1500万円(基礎控除後1390万円)の贈与をした場合、税額は以下の通りとなります

改正前                 1390万円× 50%-225万円=470万円
改正後
 親など→20歳以上の子 1390万円× 40%-190万円=366万円
 上記以外         1390万円× 45%-175万円=451万円

 

4.税額控除

①未成年者控除

相続開始時において相続人等が未成年者である場合、その相続人等の算出相続税額から控除する未成年者控除額の金額が次のように引き上げられます。

<改正前> (20歳一相続開始時の年齢)×6万円
<改正後> (20歳一相続開始時の年齢)×10万円

 

②障害者控除

相続開始時において相続人等が障害者である場合、その相続人等の算出相続税額から控除する障害者控除額の金額が次のように引き上げられます。

<改正前> (85歳一相続開始時の年齢)×6万円(特別障害者は12万円)
<改正後> (85歳一相続開始時の年齢)×10万円(特別障害者は20万円)

 

5.小規模宅地等の特例

①特定居住用宅地等の限度面積の拡大

被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で一定の要件を満たすものについては、特定居住用宅地等として宅地等の面積のうち限度面積までの部分に相当する金額の80%相当額をその宅地等の評価額から減額することができますが、この限度面積が、次のように拡大されます。

<改正前> 限度面積…240㎡
<改正後> 限度面積…330㎡

 

②居住用と事業用の宅地等を選択する場合の限度面積の拡大

特定居住用宅地等と特定事業用等宅地等を併用選択する場合の限度面積について、次のように拡大されます。

<改正前> 特定居住用宅地等…240㎡/特定事業用等宅地等…400㎡
→合計400㎡(注)まで適用可能 (注)一定の面積調整が必要
<改正後> 特定居住用宅地等…330㎡/特定事業用等宅地等…400㎡
→合計730㎡まで重複適用可能

 

6.まとめと対策

  • 基礎控除の減額で影響を受ける層…生前贈与、保険の活用、小規模宅地特例の適用による対策
  • 税率の一部アップで影響を受ける層…相続時精算課税や事業承継税制の活用、小規模宅地特例の重複適用による対策
  • 共通…事前準備、遺言作成、株価や不動産対策検討の重要性 

    以上

 


医療法人とは、「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする 社団 又は 財団(医療法の定義)」を言います。
医療自体は医師等の専門家が行うべきものですが、病院のように大規模な組織や施設をもつ場合には、個としての活動には限界があり、組織経営が必要となってきたことから定められた制度です。

この「医療法人」制度は、昭和25年に始まり、その後昭和39年の「特定医療法人」制度や、昭和60年の「一人医師医療法人」制度など、変遷を経て現在に至っています。

さて、現在存在する医療法人の多くは、平成19年4月1日より前に設立された「出資持分(株式のようなもの)あり」法人となっています。
現在この「出資持分のある医療法人」の新規設立は認められておらず、「経過措置(型)医療法人」と呼ばれています。

これらの法人の出資持分には財産価値があります。このため、出資持分には以下のような問題が発生します。

  • 出資割合に応じて純資産の払戻しを請求できる
    →医療法人の資金が激減し、資金繰りを圧迫する可能性がある
  • 出資者が死亡した場合、相続財産となる(時価評価は株式等に準じて行われます)
    →換金できない資産(持分)に高額な相続税が課税される
    相続税の概算についてはこちら(相続税の概算)をご覧ください
  • ある出資者が持分を放棄した際、他の出資者持分の価値がその分上がったものとして、他の出資者に「贈与税」が課税される

このような問題を回避する手段として「出資持分なし医療法人」への移行という手続が準備されています。
この手続は、出資者が自分の出資持分を放棄することで、上記のような問題を解決することを目的としています。
(※もちろん、こういう問題に心配が要らない場合、持分ありのままでも問題ありません)

この「出資持分なし医療法人」への移行を促進するため、厚生労働省は 「認定制度」を作りました。
認定制度の流れは、以下の通りです(厚生労働省資料より )。

この制度の特徴は、以下の通りです。

  • 認定を受けると、上記の問題点で説明した「贈与税」「相続税」の納税が猶予されます
  • 認定の日から3年以内に出資持分が放棄され、持分のない医療法人になると、猶予された税額が免除されます

なお、出資持分の免除により、免除した者の相続税や贈与税が不当に減少すると認められる場合(相続税法66条④)の「法人に対する贈与税課税」は、依然としてのこっています。この課税がなされないためには、運営組織の適性性や法人の社会的存在としての認識など、いくつかの要件を満たす必要があります。

出資持分は財産であるとともにオーナーシップの源泉であり、これを簡単に放棄することは医療法人の経営に悪影響を与えるかもしれないという懸念をお持ちの方も多いと思います。
この考え方は間違っている訳ではありませんが、他方多くの医療法人が抱える純資産は、前述のような金銭的問題を必ず生みます。
財産的オーナーシップの消失は、人的なオーナーシップ(ガバナンス)などでカバーすることも可能ですので、経営体制の強化とともに、ぜひこの認定制度を活用し、持続的な病院・診療所経営が可能となる体制を整えて頂きたいと考えております。


平成20年5月、「中小企業における経営の承継の円滑に関する法律」が成立しました。

この法律は、日本全体の雇用の約70%を支えている中小企業の経営者が円滑に事業承継でき、結果として雇用が確保されることも考慮して制定されました。

さてこの制度ですが、大きく分けると「遺留分に関する民法特例」、「金融支援」、「相続税の課税についての措置」から構成されています。そして、相続税の課税問題については、平成20年度の税制改正要綱にて、「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」が平成21年度の税制改正で創設されることが明記されました。 この制度の当初の概要は、以下の通りでした。

  • 会社経営者がその子などに経営権を譲り、同時に株を贈与する場合にはその贈与税を一部納税猶予する
  • 会社経営者に相続が発生した場合、経営を受け継ぐ子などが相続した株式についての相続税の納税は猶予する
  • 上記の贈与税、相続税の納税猶予は、それぞれ一定の条件のもと納付義務が免除される
  • これらの対象となる株式については、遺留分の適用外とすることができる(民法の特例)

しかしながらこの制度、様々な届出や確認など手続が煩雑なこと、また「雇用の8割を5年間維持する」という、経営者の経営判断にとって大きな足かせとなる制限が課されていること、またこれらの要件を満たさなければ「猶予」された税額を、利子税と同時に一括で支払わなければならないという厳しいハードルが置かれており、成立から現在に至るまで適用した経営者は500件余りとあまり多くありませんでした。
実際に私も1件担当しましたが、経営者の現況からみて上記の制約を受けにくい環境にあったため実現しただけで、非常に使いにくい制度であったとの印象を持っています。

そこで、平成25年改正においては主に下記のような改正がなされています。

  • 経済産業大臣の「事前確認」を廃止、事前確認なく制度の利用が可能になった(平成25年4月から)
  • 現在「現経営者の親族」に限られている後継者について、親族外にも適用対象を広げた(平成27年1月から)
  • 5年間毎年の雇用8割維持要件を、「5年間平均」と緩和(平成27年1月から)
  • 利子税負担の軽減(利子税率引き下げ、一定の要件の下で利子税支払免除など、平成27年1月から)
  • 株式の移転時に「役員を退任」する必要があった現制度に比べ、「代表者の退任」と緩和した(平成27年1月から)

これで利用する方が増えるかどうか個人的には疑問が残るのですが、事業承継のための手段が少しでも増え、そして使いやすくなるのは歓迎したい所です。

 

なお、事業承継税制の利用に限らず、事業承継プランを策定、実施するには慎重な検討と十分なプランニング、そして事業承継計画とマッチした中長期経営計画の確実な実施が必須となります。
このようなプロジェクトは「単なる節税対策」ではありません。
ご自身の事業承継をお考えの際は、豊富な知識と経験をもつ専門家(弁護士、会計士、税理士、金融、不動産など)を選任して、後継者のみならず親族外のリーダー層(現、次世代)まで含めたプロジェクトチームの編成を強くお勧めします。

 


新聞などで、追徴課税のニュースが出る際に「見解の相違」という言葉が良く出てくると思います。 この「見解の相違」とは何でしょうか?

税法はもちろん法律ですので、相当細かい検討を重ねて精緻に作られています。またその上、税務の世界には「通達」という、法律ではないものの法律に近い拘束力を事実上持っている決まりがあります。 しかし、それだけ細かい内容が決められていても、その運用方法や趣旨の認識には少し幅があります。 また、税法というのは基本的に「何かの事実が発生した場合」に「どのような課税を適用するか」について定めた法律です。ですから、その「何かの事実」について納税者側と国税側に認識の相違があった場合、課税の前提となる事実認識のから争いが起こることになます。

しかし、通常は調査する側である国税側の方が、調査を受ける側の方がやはり立場が弱いものですから、そのような「見解の相違」があれば、どうしても調査を受ける側が引いてしまう場合が多いようです。これがいわゆる「見解の相違」が「調査の結論」と言われる所以です。

まあいくら納税者側が口頭で正当性を主張しても、その話を調査官がそのまま税務署へ持ち帰る訳にはいきません。 彼らとて公務員ですから、自らが法令の判断を明らかに誤っているのでない限り、納税者側の認識を補強する筋合いはありませんし、あまり納税者側をかばうようなそぶりを見せていては、自分の立場すら危うくするかもしれないのです。

 

さて、このような事象が発生した場合、納税者側の税理士としてはどのように行動すべきでしょうか。

有効な方法の一つは、「文書を提出すること」です。 この文書は、税法などが定める正式な文書ではありませんが、納税者側の主張や事実認定に関する項目を論理的に、かつ税法などの法令に基づいて説明するものです。

調査官に対してこのような文書を提出することで、納税者側の主張が認められる可能性は高くなります。
私は、これまで文書提出を得意分野の一つとしてきました。

十分に効果を発揮する文書を作成するためには、単に文章がうまいだけでは足りません。 一種職人芸的な、論理的思考に基づく文章構成が必須となります。 実はこんなところで、理系出身であることが役に立っています。 「論理的に物事を伝える文章を作成する」訓練は、工学部の卒論、修士論文、学会発表時の論文作成で担当教授から相当厳しく指導を受けているのです。

全く違う分野で何も使えるものはないかと思っていましたが、こういう意外なものを含め、人生無駄なものは何もないんだなぁと感慨深いですね。

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平成25年1月24日、与党自民党・公明党から「平成25年税制改正大綱」が発表されました。

様々な論点が織り込まれていますが、その軸の一つはいわゆる「富裕層増税」にあると言っても良いと思います。
この「富裕層」増税の趣旨は以下の通りです。

・平成27年1月から改正施行
・(所得税)課税対象所得のうち4000万円を超える部分で、税率が40%から45%に
・(相続税)基礎控除(相続税がかからない部分)が
「5000万円+1000万円×相続人」
から、

「3000万円+600万円×相続人数」
に変更
・(相続税)相続財産が6億円超の部分に係る税率が、現行の50%から55%に変更

富の再分配という点に置いて頭から否定するものではありませんが、日本の金融や税制も相当国際化している現在、このような負担増を嫌って、例えば海外を利用した対策を採用する方も増えると思います。 また実際、そのようなご相談も最近増えつつあります。

なお、相続税に関する改正で、税額にどれくらいの影響があるかについては、以下のシミュレーションで調べることができます。

相続税の概算(塩尻公認会計士事務所WEBページ)


0.遺言を書こう!

私が2007年頃から、年末に必ず行っている作業があります。それは、「遺言書き」です。

遺言と聞くと、お金持ちのお年寄りが自分の死期が近いことを悟って書くものであるというイメージがありますが、私は特にお金持ちでも死にかけているわけでもありません。では、なぜ遺言を、しかも毎年書いているのでしょうか?
その理由を今回ご説明しますので、ぜひお読みの上実践してみてください。

1.遺言とはどんなもの?

私がお勧めしている遺言形式を説明する前に、まずは遺言について一般的に本などで説明されていることから書いてみます。

1)遺言とは
遺言とは「人が自分の死後一定の効力を発生させる目的で、一定の方式でなされる相手方のない単独行為」のことを言います。簡単に言うと、人が自分の死後、一方的に「あれをしろ、これをしろ」とまだ生きている親族や他人に命令することです。

人の死後は、よほど霊感の強い方でもなければ現世とのコミュニケーションは取れませんので、勝手な事がなされないよう遺言については法律で厳格に要件が定められています。また法律上、遺言で指定出来るのは先ほど説明しました認知、相続分の指定、遺贈などに限られています。

余談ですが、弁護士さんは遺言を「いごん」と読みます。「ゆいごん」ではなく「いごん」と読むと、業界人のフリができます。

2)遺言書の種類
さて、民法上、遺言には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類が定められています(民法967条)。この他に臨終の場合や船舶、航空機中など、やむを得ない場合の特別な方式もありますが、今回は省略します。

では、これらの遺言方式の特徴について説明します。

  • 自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
    自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印鑑を押すことで作成できます。
    この方式の長所は、紙一枚あれば容易に作成できることにあります。その反面、専門的知識のない方が書いた場合は法律的な要件を満たしていなかったり(日付の抜け、不動産の指定間違い、署名漏れなどが良く発生します)、ひどい場合には間違いなく本人が書いたかどうかについての疑いが発生する場合もあります。
    また、改ざんを防ぐために封をした場合、相続発生(死亡)後開封するためには家庭裁判所に持ち込み、検認という手続を受けなければならなくなります(難易度は高くないですが、書類集めや手続自体が結構面倒です)。
  • 公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
    公正証書遺言は、証人2人が立ち会った上で遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、これを公証人が筆記、遺言者や証人が確認の上、公証人を加えて全員が署名、押印することによって作成します。作成した遺言書は、原本を公証役場に保管し、控を遺言者が持つことになります。
    この方式は、作成が公証人であること、また遺言書の原本が公証役場に保管されていることから、その証拠能力が非常に高いところに長所があります。また、公証人がその内容についてかなり厳密にアドバイスしてくれる場合も多く、無効な内容となる可能性が非常に低くなります。しかし、公証人に対しては相続人数や相続財産の額に応じて所定の手数料がかかりますし、証人の確保についても、単独で作成可能な自筆証書遺言より手間がかかると言えます。
  • 秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)
    秘密証書遺言は、遺言者が署名押印した遺言書を封印し、これについて公証人及び証人2人の前に提出して「自分の遺言である」旨を述べた上で、公証人が日付などを記載、証人と遺言者が自署押印する方式です。
    この方式は、遺言書を秘密に出来るというメリットがあるのですが、誰の目にも触れないため、開封した際内容に不備があれば無効になるという大きなリスクがあります。また相続発生後開封するためには家庭裁判所に持ち込み、検認という手続を受けなければならないことや、公証人の手数料がかかることなどのデメリットもあります。

3)遺贈・死因贈与について
民法には、相続以外にも人の死に起因して財産などが移転する場合が規定されています。それは、遺贈(いぞう)と死因贈与です。これらは贈与の一種であるという点で共通なのですが、それぞれ次の様な違いがあります。

遺贈とは、遺言によって財産を贈与する行為です。遺贈には受け取る側の意思は必要なく、遺言にて一方的に「○○は△△に遺贈する」と書けば足ります。

これに対し、死因贈与は贈与する者の死亡によって効力が生じる、贈与する者の生前に締結された贈与契約を言います。死因贈与の場合は、遺贈と異なり遺言に記載する必要はありません。また贈与する者と贈与される者の間に合意(あげます、もらいます)が必要となります。

これらは、民法が規定する親族など、相続の対象となる者以外に財産を分けたい場合に利用されます。例えば、内縁の妻や、親族以外でお世話になった方に対して財産を一部または全部移転したい場合に利用します。

なお、相続税法上はこれらも相続とほぼ同等に扱われますので、遺贈や死因贈与を受けた人は、相続した方と同等の相続税を負担することになります。

4)遺留分
元々、遺言という制度は被相続人が自由に相続人などに対して自分の財産を分配するためにあるのですから、好きなように内容を書いてもその通りに実行されるというのが原則です。

しかし、被相続人が相続人以外の者に全財産を渡してしまった場合や、特定の相続人だけに相続させた場合や生前贈与をした場合には、他の相続人は全く遺産を相続することが出来ません。

何ももらえない相続人が被相続人の財産形成に貢献していた場合も考えられますし、ひょっとしたらその財産がもらえなければ相続人が生活に困窮する事もあるかもしれません。

このような考え方に基づき、民法においては法定相続人に最低限の遺産をもらえる権利を保証しています。この権利に当たる部分を「遺留分(いりゅうぶん)」といい、その請求を行うことを「遺留分の減殺請求」といいます。

父母や祖父母など、直系尊属のみが相続人の場合には法定相続分の1/3が、またその他の場合には1/2が遺留分となっています。また、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

5)遺言書を作成する必要があるのは?
一言で言うと、「法定相続割合によらない配分方法で財産分けを行いたい場合」には遺言を書く必要があると言われています。そのようなケースをいくつか説明します。

  • 子供達やその配偶者同士の仲が悪い場合
    このような場合、ある程度それぞれが納得出来る範囲で財産分けを指定することで、相続財産を巡る争いでさらに関係を悪化させる事態を防ぐ事も可能です。
  • 夫婦に子供がなく、兄弟姉妹が疎遠な場合
    そのまま夫婦のどちらかが亡くなった場合、相続財産は生きている配偶者だけではなく、兄弟姉妹にも相続分が残ります。
    配偶者に全ての財産を移転したい場合は、「全財産を配偶者に相続させる」旨の遺言を作成します。兄弟姉妹以外の相続分の場合は、先にご説明しました「遺留分」があるのですが、これまた先にご説明しました通り兄弟姉妹には遺留分がないため、このような事が可能となるのです。
  • 行方不明者がいる場合
    行方不明で連絡の取れない推定相続人(相続人になる予定のある人)がいる場合には、家庭裁判所などで「財産管理人」を選任してもらわなければ遺産の分割協議が出来ません。このような場合でも、遺言を作成しておけば、遺産分割協議の必要がなくなるためスムーズな相続手続が可能となります。

2.遺言の書き方
1)遺言の本質とは
それでは、ようやく私が考える遺言書の本質や具体的な書き方についてご説明したいと思います。

遺言がどういうものかについて知らない方は少ないと思いますが、その本質が何であるかについて理解している人はあまり多くありません。これは私たち税理士でも実は同じです。

実は遺言は単に財産分けの方法を指定するだけのものではなく、「本来死後には何も出来ないはずの人間が死んでなお意思表示を可能とする」という点で、人間が初めて発明した、「神や自然の摂理に逆らう方法」であると言えるのです。このため、十分な効果を発揮する遺言を作成する場合には、前述の「死んでなお意思表示する」という遺言の本質を十分に理解する必要があります。

ただ、すばらしい効果を発揮する遺言も、しょせんは紙切れに過ぎませんので、一方的なコミュニケーションと同じで効果が不十分となる場合もあり得ます。このため、財産分けなど重要な事項を法律の定め通りに作成することはもちろん、被相続人の意思をスムーズに相続人をはじめとする関係者が理解し、実現してもらえるような「お膳立て」が必要となります。これが「付記事項」です。

付記事項にはよく「奥さんへのねぎらい」や「子供達への希望」を書きましょうと言われる場合が多いのですが、私はもう一歩進んで「なぜそのような希望を書いたのか」という背景から書き起こしていくことをお薦めしています。すなわち、遺言の内容が何故そのような筋書になったのか、またその理由がさらにどのような(主に自分の)歴史に基づくものかについて、自分史のような形で書いていくわけです。

このような配慮に基づき記載された遺言は、自分の死を最大のリスクとする一種のBCP(事業継続計画)として役立つとともに、自分の死後も家族やそれを取り巻く関係者に幸せを与え続けることができるかもしれません。

ということで、前述した「遺言書を作成する必要があるのは?」で説明した方のみならず、家族を持つ人、責任ある職業に就いている人は、皆ぜひ遺言を書くべきだと私は思っています。また、リスクマネジメント的側面から見ると、状況の変化に応じて毎年必ず見直すことも必要だと思います。

2)具体的な書き方
それでは、これまで説明した考え方に基づく遺言書の書き方例をご説明します。
全体をパソコンで作成するのが楽ですし全く問題ありませんが、財産分けなどを示す「相続指定」の項目だけは、別に手書きしたものを作成、捺印して保管しておきます。そうしないと法的効力が認められないからです。

======================= 例 =======================
遺  言  書

日付:平成○○年○○月○○日
氏名:○○ ○○ 印

1.生い立ちとこれまでの生き方
1)生い立ち
昭和○年○月○日 ○○にて出生
苦労や良かったこと、思い出などを少しずつ加えて行っても良い
2)家族
昭和○年○月○日、○○と結婚。
昭和○年○月○日、第一子○○生まれる
3)これまでの生き方
「座右の銘、書」「尊敬する人物」「大恩人」
「毎年の出来事」を簡単に書いておくのもいいかもしれません。

2.各人へのお礼
妻(配偶者)、両親、恩人、子供たち、孫たち、友人など

3.相続指定
(平成○○年12月31日補記)手書遺言作成
(平成○○年12月31日補記)手書遺言に変更なし
(平成○○年12月31日補記)手書遺言に遺言執行者の指定を追加

※以下については、手書及び自署捺印したものを作成、保管

遺 言 書

1.○○(妻)が存命の場合
1)○○には、以下の財産を相続させる
①土地・建物
②現金、預金
③○○株式会社株式
④…
2)○○には、以下の財産を相続させる

………

2.○○が存命でない場合

………

3)遺言執行者として○○を指定する

平成2○年12月31日 遺言者○○○○ ○印

所有資産や負っている負債がそれほど複雑でない場合は上記のような簡易な形でも問題はありません。しかし、企業経営者や不動産を多数所有している方の場合、上記部分については弁護士等に相談して詳細な資産、負債の相続指定を行い、公正証書遺言とした上でその控えを上記手書部分の代わりとすることを強くお勧めします。

4.その他指定・指示
1)後継者の指定について

  • 生い立ちや会社の状況など様々な要因を受け、後継者指定の正当性を説明した上で指定。
  • その他の親族に対しては、後継者や家族への支持、支援を依頼しておく。
  • 採用している相続、相続税対策についての説明(関与してもらっている弁護士や税理士にあらましを書いてもらい、コピーしても可)。

2)葬儀、埋葬について
3)各種資料について

  • 資料の保管場所
  • パソコンなどのパスワード(そのものを書くとセキュリティ上問題があるので、見てほしい人間だけがアクセスできる保管場所を示したり、共通の暗号などで示すなどの配慮が必要かもしれません)

4)当面の事業遂行について(個人版BCP的な内容)

  • 懸念点などと対策
  • 外部の協力者について

5)取引先や友人等への連絡について

5.附録:現在の財産、負債、保険等の状況整理
これらは、遺言に記載された手続を執行したり、死亡後の保険金請求手続をスムーズに行う上で重要な情報となります。以下例を挙げて説明します。

<印鑑>

  • 認印1…一般用認め印(細い三文判)、重要な契約などには一切使っていない
  • 認印2…金融機関など契約用
  • 認印3…○○の際作成、平成○○年より使用なし
  • 実印…現在の実印

<資産>
1)事業用資産(会社経営の場合は法人の貸借対照表などでも可)

  • 事務所土地・建物…平成23年度固定資産税評価額 ○○千万円
  • 自動車…約○○万円

2)個人用金融資産

  • ○○銀行○○支店 普通預金 ○○○万円
  • ○○証券○○支店預け有価証券 ○○株式会社 ○○株
  • ○○株式会社未公開株 ○○株(友人から頼まれ出資したもの)
  • 株式会社○○株式(代表取締役就任) 20,000株

3)個人用不動産

  • 自宅土地・建物…平成23年度固定資産税評価額 ○○千万円

4)保険契約(資産性のもの)
5)保険契約(かけ捨てのもの)
6)その他動産

  • ゴルフ、リゾートクラブ会員権など
  • 美術品など

<負債>
1)事業用
○○銀行 ○○○○ ○○○○円
○○銀行 ○○○○ ○○○○円
○○信金 ○○○○ ○○○○円

2)個人用
住宅ローン ○○銀行 ○○○万円(詳細は別紙返済予定表)

以上


皆さんこんにちは。
塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

「相続の基礎」コラムも、今回でいよいよ最終回です。
最終回となる今回は、一番気になる?相続税の税務調査についてお話します。

3)税務調査

①税務調査はいつ、どんな時に来るか

相続税の税務調査は、相続税の申告書を提出した後、1年~2年程度の間にあることが多いようです。これは、税務署が事前に申告書の内容を分析したり、被相続人や相続人について収集した資料と付き合わせたりといった、「事前調査」の時間がかかるためです。

また、相続税の申告書を提出したからと言って、必ず税務調査を受けるわけではありません。税務調査の対象となるのは、事前調査の結果以下のような兆候がある場合です。

  • 被相続人の所得や、被相続人がかつて相続した財産などからみて、申告された相続財産が少ないとみられる場合
  •  所得税の高額納税者
  • 生前に不動産や株式に関係する情報があったにも関わらず、これらに関する相続財産の申告がない場合
  • 死亡前に預貯金の大きな動きがある場合
  • 財産に比べて債務がアンバランスに多い場合

 

②税務調査手法

犯罪レベルの脱税が疑われる場合の「査察」ではありませんので、通常の税務調査の場合は事前の日程調整から訪問まで、あくまで紳士的に行われます。

担当した税理士がきちんとした手続きを採っていれば、納税者の方に直接電話がかかることもありません。また、都合の悪い日や体調などもきちんと配慮してくれます。

ただ、穏やかだからといって油断するわけには行きません。前述の通り、調査官は既に事前調査である程度のあたりをつけているわけですから、もし明らかな問題があれば既に逃げ場はなくなっている場合すらあります。

調査が始まると、通常ベテラン調査官はまず雑談から始めます。そして話を進めながら、いろいろな書類や資料の提出を求めてくることになります。よく確認するものは、例えば以下のようなものです。

  • 生前の仕事や趣味
  • 亡くなった時の様子など(時系列で)
  • 香典帳
  • 手帳、メモの類
  • 電話帳
  • 金庫の中身
  • 印鑑(家族などの三文判も含む)
  • 銀行や証券会社のカレンダー、手帳、その他ノベルティ

 

印鑑は、単に印影を集めるだけではなく、どの印鑑をどれくらい使っていたかも調べます。よくいわれるのは、朱肉を何もつけずに紙に押し、そのあと朱肉をつけてもう一度押す、という方法です。頻繁に使われていた印鑑であれば、朱肉の残っていることがよくあるからです。このため、私たちは普段から、重要な印鑑を使った後には徹底的に清掃して置くことをお勧めしています。

③税務調査が来ないようにする方法

  • 申告前には財産調べをしっかりと
    調べられる前に、申告漏れがないかどうかしっかりと調べましょう。そのうえで何か漏れていたとしても、よほどのことがなければ修正申告するだけで、罰にあたる重加算税までは課せられません。
  • 生前から準備
    亡くなられてから財産調べをするのは難しいものです。特に、夫が妻や子に財産の詳細を教えていないことも多く、相続発生後に右往左往することもよくあります。財産の特定に時間がとられると、税務対策を検討する時間も少なくなってしまいます。
  • 前回の相続に注意
    前回の相続、例えば被相続人の親や、配偶者からいったん相続があった場合、その財産がどのように増減して次の相続に至ったかについては必ず調べられます。不自然に減少している場合には、なぜ減少しているかをきちんと説明できなければなりません。
  • 相続税に強く、調査経験も多い税理士に依頼
    冒頭でも説明しましたが、税理士の全員が相続に強いという訳ではありません。残念ながら、強いとは言えない方が業務を受けた場合、申告書の内容も調査での対応についても、十分な効果が出せない場合もあります。また、調査のポイントをよく把握し、対応に長けていたり、調査のポイントを事前に説明、提出することで調査を行いにくくする書面を提出できる税理士も非常に有効です。

 

④金融機関に対する相続税税務調査

相続税の場合、申告漏れが発生する財産で最も多いのは現金、預貯金です。

屋根裏や床下に現金を隠しているなら別ですが、普通の方の場合は金融機関に預金を持っておられると思います。この預金については、忘れていたケースも含めて、意外と申告漏れがよく起きるのです。

さて、税務署も、さすがに生前から全ての取引銀行を把握しているわけではありませんので、事前調査の際には様々な方法で情報収集を行います。

例えば、被相続人の住所、勤務先周辺にある金融機関に対して、取引があるかどうかやその内容の照会文書を送り、申告された内容に漏れがないか、死亡直前に大きな資金が流出していないかなどを確認します。
#最近はGoogleの地図サービスなどが活用しやすくなっていますので、これを用いて「被相続人が関係していた場所周囲〇キロメートル以内の金融機関」などといったリストを作成して調査しているとの話も聞きます。

また、調査の途中には直接金融機関に出向き、貸金庫の存在や、親族の名義を借りた口座などがないかも調べます。

ところで、昔から「郵便貯金には調査がされにくい」という噂がありました。単なるうわさのようにも聞こえるのですが、実は根も葉もない話ではなかったようです。以前には国税局対郵政省という縦割り行政の関係で、確かに調査するのが通常の金融機関より手続的に難しかったようでこのような噂が発生したようです。ただ、ある時点においてこの点にはメスが入り、現在は税務署からの問い合わせには迅速かつ正確に答えるという取り決めができていますので、郵便貯金が調査から逃れやすいということはなくなりました。

 

6.最後に

8回に渡って相続や戸籍、相続税についてご説明しました。単行本としては少なく、コラムとしては若干多いという中途半端な内容になったかもしれませんが、お読みになる皆さんのご参考になれば幸いです。

なお、このコラムブログは基本的にコメントを受け付けておりません。ご質問やご感想がございましたら、質問ページからコメントをお寄せ下さい。

(以上)


皆様こんにちは。
塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

ようやく「相続税」の話に入れます。
相続税は、税理士でもある私たちが最も得意とする分野の一つです。
しかし、この分野も相当に範囲が広く、まず全体像を理解するだけでも大変です。
今回は、税額の計算や特例、納付の方法など、全般的な論点についてご説明します。

 

5.相続税・税務調

1)申告

①相続税の一般的手続

相続税の計算は、一般的には以下のような手順で行われます。

 

  • 資産の評価
    現金預金や土地建物などの資産について、相続税計算のための時価を計算します。これを「評価」と言います。土地建物や有価証券などの時価については、計算方法が詳しく指定されています。
  • 遺産額の計算
    上で計算した資産から、課税されない資産(非課税資産)や負債、葬式費用などを差し引いて、ネットの遺産額を計算します。
  • また、相続が開始する以前3年以内に為された贈与財産も加え、相続税の対象となる「課税価額」を計算します。
  • この課税価額から、基礎控除と呼ばれる課税最低限の金額を控除します。
    基礎控除は、5000万円に法定相続人一人あたり1000万円を加えます。
    この際、先にご説明しました通り、養子の数については制限があります。
  • 基礎控除を差し引いた残額を、「法定相続分で分けたと仮定」し、それぞれの相続人の配分額に応じて以下の表にある税率を適用します。

 

相続税の税率と控除額(速算表)

各相続人の法定相続分 税率 速算控除

~1,000万円以下

10%

0万円

1,000万円超~3,000万円以下

15%

50万円

3,000万円超~5,000万円以下

20%

200万円

5,000万円超~1億円以下

30%

700万円

1億円超~3億円以下

40%

1,700万円

3億円超~ 50%

50%

4,700万円

 

注意すべきなのは「実際にどのような財産分けをしたか」とは関係なく、「法定相続分で分けたと仮定」する点です。

 

  • 上記で計算されたそれぞれの相続税額を合計し、ここで初めてそれぞれが配分を受けた実際の財産割合で相続税を配分します。
  • それぞれ配分された税額を納付します。納付が困難な場合は、後述の延納や物納といった制度を利用することができます。
  • 配偶者の税額軽減
    相続人が配偶者(婚姻届が出されている配偶者に限る)場合、法定相続分と1億6000万円のいずれか多い額まで相続しても、相続税はかかりません。
  • 兄弟姉妹、孫養子は2割増
  • 相次相続控除
    10年以内に続けて相続があると、2回目の相続(第2次相続)では1回目に払った相続税の一部を差し引くことができます。この差し引く金額は、年数の経過によって減少するよう定められています。ただし、適用できるのは法定相続人に限られます。

 

②相続時精算課税

従来から贈与税には年間一定額(現在は110万円)の基礎控除制度がありましたが、これに加えて平成15年より、相続時精算課税という制度が創設されました。この制度は、消費を拡大するため、親から消費をする子の世代への贈与を活性化するという目的で設けられました。

相続時精算課税制度とは、親子間の贈与について2500万円までの財産に税金をかけず、それを超える部分について一律20%の贈与税をかけるという制度です。なお、2500万円の非課税枠は、財産をもらう人が一生でもらえる財産の総額であり、贈与の回数は何回あってもかまいません。ただし、前年以前に、この特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2500万円からその金額を控除した残額がその年の非課税枠となります。

なお、この制度の適用対象は原則として、65歳以上の親から20歳以上の子供(子供が亡くなっているときには20歳以上の孫を含みます)への贈与に限られています。

この制度のポイントは、贈与した資産は、相続財産に加えて相続税を計算し、納付した贈与税があればこれを相続税から控除するという点にあります。

例えば、この制度による贈与を4000万円していて、相続財産が1億円あれば合計の1億4000万円が相続税の対象となります。なお、この制度を利用した人が、相続や遺贈によって財産を取得しなかった場合であっても、相続時精算課税で被相続人から取得した財産の価額は、贈与したときの時価で相続税の課税価格に加算され相続税がかかります。

この他、住宅資金を取得するための贈与を受けた場合の特例などもあるのですが、時間の関係で省略します。

 

③事業承継税制

平成20年5月9日に「中小企業における経営の承継の円滑に関する法律」が成立しました。この法律は、日本全体の雇用の約70%を支えている中小企業が円滑に事業承継でき、その結果雇用を確保できることを目的に制定されました。法律の3本柱として、遺留分に関する民法特例、金融支援、相続税の課税についての措置(詳細は平成21年度税制改正にて)となっています。

そして、相続税の課税問題については、平成20年度の税制改正要綱にて、「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」が平成21年度の税制改正で創設されることが明記されました。

これらの制度は非常に複雑ですので、重要な項目について簡単に記載しておきます。

  • 会社経営者がその子などに経営権を譲り、同時に株を贈与する場合にはその贈与税を一部納税猶予する
  • 会社経営者に相続が発生した場合、経営を受け継ぐ子などが相続した株式についての相続税の納税は猶予する
  • 上記の贈与税、相続税の納税猶予は、それぞれ一定の条件のもと納付義務が免除される
  • これらの対象となる株式については、遺留分の適用外とすることができる(民法の特例)

 

2)延納、物納

①延納

国税は、金銭で一時に納付することが原則ですが、申告又は更正・決定により納付することになった相続税額(贈与税額)が10万円を超え、納期限までに、又は納付すべき日に金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、その納付を困難とする金額を限度として、申請書を提出の上、担保を提供することにより、年賦で納めることができます。これを「延納」といいます。この延納期間中は利子税がかかります。

②物納

納付すべき相続税額を納期限までに、又は納付すべき日に延納によっても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、その納付を困難とする金額を限度として、申請書及び物納手続関係書類を提出の上、一定の相続財産で納付することが認められています。これを「物納」といいます。

こちらのページからご質問などが可能です。

最終回となる次回は、ちょっと恐ろしい?税務調査についてです