皆様こんにちは。

塩尻公認会計士事務所の塩尻明夫です。

これからご紹介する「相続の基礎」コラムは、相続、相続税全体を広く対象にしています。このためには、相続税法だけではなく、相続の基本的な事項を規定している「民法」の世界にも踏み込む必要があります。

金融機関にお勤めの方で、お客様が亡くなられた場合や、税理士事務所に勤めはじめたばかりの方など、相続や相続税にまつわる手続や実務、問題について幅広く入門したい方が手早く理解出来るように配慮しました(うまく実現出来ているかどうか分かりませんが)。

今回のコラムは、おおよそ以下のような構成を予定しています。

1.相続とは
2.相続の手続
3.相続と戸籍
4.相続争い
5.相続税・税務調査

 

1.相続とは

1)相続はいつ起こるか

そもそも、「相続」とはなんでしょうか?この事を説明する前に、皆さんに相続というもののイメージを問うて見たいと思います。例えば、以下のようなところでしょうか。

  • 相続はなんだか恐いものだ
  • 相続は人が死ななくても起こる場合がある
  • 相続があると必ず税金がかかる
  • 相続があるとマルサが入る
  • 財産がなければ相続のことは考えなくても良い

 

さて、相続とは、人間の財産や負債、権利、義務の一切を他の人間が受け継ぐことを言います。この場合の「人間」は、当たり前ですが私たちのような自然人に限られ、会社などの法人は含まれません。

また、よく言われるように「相続イコール財産分け」でもありません。簡単に言えば、「誰かの一切合財をそのまま受け継ぐこと」と表現してもよいかもしれません。

では、相続はどんなときに起こるのでしょうか。先ほど、「民法」が相続の基本的な事項を規定しているとお話しました。民法882条には、「相続がいつ起こるか」についてこんな規定があります。

 

「相続は、死亡によって開始する。」(民法882条)

 

これ以外にも、失踪宣告といって、行方不明者の生死が7年間明らかでないときなどの場合、家庭裁判所への申立てによって行う「失踪宣告」によっても相続は発生します。失踪宣告とは、生死不明の者に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。また、日本国憲法が施行される前の旧民法においては、「家督相続」における「隠居」のように、死亡を原因としない場合もありました。

 

さてここで、亡くなった人や相続する人などという一般的な言葉の代わりに、相続や相続税で使われる専門用語を定義しておきます。このコラムにおいては多用しますので、ぜひ認識しておいて下さい。

 

  • 被相続人(ひそうぞくにん) … 亡くなった人など
  • 相続人(そうぞくにん) … 被相続人から財産などを相続する人
  • 一般承継(いっぱんしょうけい) … 相続によって財産等を受け継ぐこと
  • 特定承継(とくていしょうけい) … 譲渡などによって財産等を受け継ぐこと

 

2)相続で何が起こるか

①相続は財産だけの移転ではない

では、相続が起こるとどんなことになるのでしょうか。これについても、民法に規定があります。

 

(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 

「一切の権利義務」とあります。つまり、財産だけが移転するわけではなく負債(義務)も移転するのです。もっと言うと、単なる資産や負債でも足りず、権利や義務全てを受け継ぐことになるのです。この「一切合切を受け継ぐ」という点については、次の項目にも関係しますので、そこでも詳しくお話します。

なお、「被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」とありますが、これは何でしょうか。これは「被相続人だから」存在した権利義務のことを言います。例えば、雇用契約などがこれにあたります。こういう権利義務は、被相続人が生存しているからこそ有効になるものだからです。

 

②一般承継と特定承継

先ほど、用語の定義で「一般承継」と「特定承継」という言葉を簡単にご説明しました。

売買のような「特定承継」は、単に所有権だけが移動するイメージですが、相続などの一般承継は、たとえば「被相続人がその財産いつどこで幾らで買ったか」などの一切合切を受け継ぐことになります。

例えば税金の世界においては、何らかの資産を譲渡した場合の所得は

譲渡代金 - その資産を取得した際の支出(*)

ですが、対象の資産が相続されたものである場合は、(*)については被相続人(被相続人も相続した場合はそのまた被相続人、と延々続く)が取得した時の支出となります。また、いつ買ったか等が重要となる税務上の特例などの場合も、被相続人が購入した際のものが相続人に引き継がれます。

 

3)相続と相続税の違いとは?

本来全く違う法律に基づく「相続」と「相続税」の違いについて説明すること自体が本来ナンセンスですし、ここにおられる皆さんはきちんと理解されていると思います。ただ、私たちがお手伝いする一般の方は、そういう理解をしている人ばかりではありません。皆さんのお客さんも同じだと思いますので、何かの時には説明できたほうがよいと思います。

簡単にその違いを定義すると、以下の通りになると思います。

 

  • 相続…人間が死んだとき財産や負債、権利や義務を相続人に受け継がせる手続。民法に規定あり。
  • 相続税…相続があったとき、財産の状況によって発生する可能性のある税金と、その計算などを行う手続。相続税法に規定あり。

こちらのページからご質問などが可能です。

次回は、2.相続の手続 から書きます。